交通事故の後に次のような症状があった場合には高次脳機能障害である可能性があります。
しかし、高次脳機能障害自体が自覚症状に乏しいこともあって、それが交通事故の後遺症であると被害者自身気がついていないことも多く、医師も見落としている場合もあります。
したがって、ここに記載されている症状がある場合にはできるだけ早く交通事故に詳しい弁護士にご相談下さい。
適格な後遺障害と認定されるためには、必要な検査を受けていただく必要があります。
物の置き場所を忘れる、新しいできごとを覚えられない、同じことを繰り返し質問するなど。
前向性および逆向(逆行)性の健忘が認められます。
その他、作話(Confabulation)や失見当識が見られます。
→前向性健忘(anterograde amnesia)とは、受傷後の学習障害のことです。受傷後では新しい情報やエピソードを覚えることができなくなり、健忘の開始以後に起こった出来事の記憶が保持されません。
→逆向性健忘(retrograde amnesia)とは、受傷以前の記憶の喪失のことで、特にエピソードや体験に関する記憶の喪失が多く認められます。
→作話とは、実際に体験しなかったことを誤って追想される現象で、その内容も変動することが多いです。
ぼんやりしていて、ミスが多い、ふたつのことを同時に行うと混乱する、作業を長く続けられないなど。
ある刺激に焦点を当てることが困難となり、ほかの刺激に注意を奪われやすい(集中困難・注意散漫)とか、より軽度な注意障害では長時間注意を持続させることが困難で、時間の経過とともに課題の成績が低下する(注意の持続・維持困難)といった全般性注意障害や脳損傷の反対側の空間の刺激を見落とす半側空間無視がみられることがあります。
→全般性注意障害とは注意機能が全般的に低下する場合をいい、注意の持続・維持が困難になります。
→半側空間無視(Hemispatial neglect、 Unilateral spatial neglect)とは、大脳半球が障害されて半側からのあらゆる刺激(視覚、聴覚、触覚等)を認識できなくなる症候のことをいいます。
自分で計画を立ててものごとを実行することができない、人に指示してもらわないと何もできない、約束の時間に間に合わないなど。
行動の目的・計画の障害のために、成り行きまかせか、刺激への自動的で、保続的な反応による衝動的な行動となりがちです(目的に適った行動計画の障害)。
自分の行動をモニターして行動を制御することができず、即時的に行動して、失敗してもしばしば同様の選択をしてしまうことがあります(目的に適った行動の実行障害)。
興奮する、暴力を振るう、思い通りにならないと、大声を出す、自己中心的になるなど。
自発的な活動が乏しく、運動障害が原因ではないのに、一日中ベッドがから離れないなどの無為な生活を送るなど。
最初のいらいらした気分が徐々に過剰な感情的反応や攻撃的行動にエスカレートし、一度始まると行動をコントロールすることができない、自己の障害を認めず訓練を頑固に拒否する、突然興奮して大声で怒鳴り散らす、周囲の者に対して暴力や性的行為などの反社会的行為が見られるなど。
急な話題転換、過度に親密で脱抑制的な発言および接近行動、相手の発言の復唱、文字面に従った思考、皮肉・諷刺・抽象的な指示対象の認知が困難、さまざまな話題を生み出すことが困難となるなど。
脳損傷後に人格機能が低下し、退行を示し、同時に発動性の低下を呈していることが多い。
これらの結果、依存的な生活を送るなど。
遂行機能障害の結果として生活上のあらゆる問題を解決していく上で、手順が確立していて、習慣通りに行動すればうまく済ますことができるが、新たな問題には対応できない。
認知ないし行動の転換の障害が生じ、従前の行動が再び出現し、固執するなど。
脳外傷に起因して(脳血管障害〔脳溢血や脳梗塞〕・非器質性精神障害を除外する)発症するこれらの症状により、日常生活または社会生活に制約がある状態が損害賠償上の「高次脳機能障害」です。